胎児期に血液細胞が生まれるしくみを解明?造血幹細胞と造血前駆細胞の起源は独立していた?

【ポイント】

  • マウス胎児期の血液細胞の大部分は、造血幹細胞※1とは別に独立して、血管内皮細胞から生みだされていることを明らかにしました。
  • Evi1遺伝子の発現量の差により、造血幹細胞、および造血前駆細胞※2の生まれる数が調整されていることが分かりました。
  • 今回得られた知見は、造血幹細胞の試験管内誘導法の開発につながると考えられます。
    【概要説明】

 哺乳類の成体において、血液細胞の大部分は、骨髄内に存在する造血幹細胞から作りだされていますが、胎児期では、血液産生は主に肝臓で行われます。胎児期の肝臓では、成体の骨髄内と同様に、造血幹細胞、分化能力が限定された種々の造血前駆細胞、成熟血液細胞(赤血球、白血球など)が観察されることから、これまでは肝臓でも造血幹細胞によって作りだされた血液細胞の階層性が存在すると信じられていました。

 今回、熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)幹細胞制御研究室の横溝智雅研究員(現?東京女子医科大学 講師)、須田年生卓越教授らのグループは、熊本大学発生医学研究所、熊本大学生命資源研究?支援センター、シンガポール国立大学、東京大学、慶應義塾大学、順天堂大学との共同研究で、マウス胎児の肝臓で観察される血液細胞の大部分は、造血幹細胞とは別に独立して発生していることを発見しました。本研究成果は、発生過程における幹細胞の役割について再考を促すものであり、令和4914日にオンライン公開され、同22日に発行される学術雑誌「Nature」に掲載されました。

※本研究成果は、文部科学省科学研究費助成事業、公益財団法人先進医薬研究振興財団、一般社団法人日本血液学会、公益財団法人武田科学振興財団、公益財団法人住友財団、熊本大学発生医学研究所高深度オミクス医学研究拠点ネットワーク形成事業、National Medical Research Council(シンガポール)の支援により得られたものです。

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【用語解説】

※1 造血幹細胞:すべての血液細胞のもとになる細胞。

※2 造血前駆細胞:造血幹細胞が成熟血液細胞(赤血球、白血球など)へと分化する過程において、中間段階に存在する細胞。造血幹細胞にくらべて分化能力が限定されている。


【論文情報】

論文名:Independent origins of fetal liver hematopoietic stem and progenitor cells
著者:Tomomasa Yokomizo1,2*, Takako Ideue1, Saori Morino-Koga3, Cheng Yong Tham4, Tomohiko Sato5, Naoki Takeda6, Yoshiaki Kubota7, Mineo Kurokawa5, Norio Komatsu8, Minetaro Ogawa3, Kimi Araki6, Motomi Osato1,4, Toshio Suda1,4**責任著者)

所属:1熊本大学国際先端医学研究機構 幹細胞制御、2東京女子医科大学 解剖学(顕微解剖学?形態形成学)、3熊本大学発生医学研究所 組織幹細胞分野、4シンガポール国立大学がん科学研究所、5東京大学医学部附属病院 血液?腫瘍内科、6熊本大学生命資源研究?支援センター 疾患モデル分野、7慶應義塾大学医学部 解剖学、8順天堂大学 血液内科


掲載誌:Nature
doi:10.1038/s41586-022-05203-0
URL:https://www.nature.com/articles/s41586-022-05203-0

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【詳細】 プレスリリース(PDF417KB)

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熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)
担当:坂井?渡辺
電話:096-373-6848
E-mail:ircms※jimu.kumamoto-u.ac.jp

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