新しい計算創薬法を開発し、希少難病の「色素性乾皮症D群(R683W 変異)」の治療薬候補を発見

【ポイント】

  • 色素性乾皮症D群(R683W)は、紫外線による皮膚における高度の炎症に引き続き、色素異常に加えて若年での皮膚がんの多発をきたす常染色体劣性遺伝性の疾患である。特に、R683W変異型は遺伝子修復機能がほとんど失われていることから重篤である。皮膚障害と重度の神経障害を伴い、根本的治療法はない。
  • 希少な難病の創薬は商業的に見て売り上げが見込めず、通常困難である。
  • 本研究チームは、希少難病で重篤な色素性乾皮症D群のうちR683W型の治療薬を、既存の薬剤および生理活性が分かっている化合物の中から、計算機による分子シミュレーションで効率よく治療薬候補を探索する創薬法『in silico DR法』を開発した。
  • 本創薬法により発見された治療薬候補は、色素性乾皮症D群(R683W)の培養細胞で遺伝子修復機能(ヌクレオチド除去修復能:NER)を回復させることが示され、本創薬法の有用性が証明された。
  • 本研究成果は、現在まで根治療法の無い色素性乾皮症D群(R683W)に対する世界で初めての特異的治療法の開発に、大きく貢献することが期待できる。

【概要】

 神戸大学医学部附属病院医療情報部の高岡裕准教授、大田美香学術研究員、菅野亜紀医学研究員(名古屋大学医学部 助教を兼務)ら、大学院医学研究科の錦織千佳子教授、中野英司助教、熊本大学発生医学研究所の立石智講師、神戸常盤大学医療検査学科の鈴木高史教授の研究グループは、既存薬を用いた安全で安価な創薬法であるドラッグリパーポージング法※1と計算創薬を融合させた新しい創薬法を開発し、これまで治療法がなく多くの患者が運動機能障害と皮膚の悪性腫瘍へと至る難治性の皮膚疾患を呈する色素性乾皮症D群のうち、特に重篤なR683W変異型に対し有効な薬剤を発見し、さらに細胞実験でこの薬剤が著効することを明らかにしました。この研究は、神戸大学と神戸常盤大学の大学間共同研究プロジェクトとして遂行されたものです。

 研究成果は、202133日に、国際科学誌「Biomedicines」にオンライン公開されました。

【今後の展開】

 現在、今回の論文で報告した計算創薬方法を用い、有効な治療薬候補をさらに発見すべく、計算機による候補化合物の探索を継続して進めています。

【用語解説】

※1 ドラッグリパーポージング(Drug Repurposing): 既に薬として使われている、または体内動態や安全性などは明らかだが治療薬開発途上の化合物など、2,006種類を対象に治療薬を探索する方法。その特徴は、治療薬開発のコストが安価なアプローチである。

【論文情報】

    • タイトル:“In Silico Drug Repurposing by Structural Alteration after Induced Fit: Discovery of a Candidate Agent for Recovery of Nucleotide Excision Repair in Xeroderma Pigmentosum Group D Mutant (R683W) ”
    • 著者:Yutaka Takaoka 1, *,?, Mika Ohta 1,2,3,?, Satoshi Tateishi 4, Aki Sugano 1, Eiji Nakano 3, Kenji Miura 1, Takashi Suzuki 1,2? and Chikako Nishigori 3

      1 Division of Medical Informatics and Bioinformatics, Kobe University Graduate School of Medicine

      2 Department of Health Science, Kobe Tokiwa University

      3 Division of Dermatology, Kobe University Graduate School of Medicine

      4 Institute of Molecular Embryology and Genetics, Kumamoto University

      * Correspondence

      ? These authors contributed equally to this work.

    • 掲載雑誌:Biomedicines
    • doi:10.3390/biomedicines9030249

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF725KB)

お問い合わせ
熊本大学発生医学研究所損傷修復分野
担当:講師 立石 智(たていし さとし)
電話:096-373-6605
E-mail:tate※gpo.kumamoto-u.ac.jp
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